<< ワンピース596話感想 | main | 「STRONG WORLD」 DVD >>

久しぶりに歴史小説読んだ☆

久しぶりに小説を読んだので、感想文書いてミル。

とは言えこんなの、既読の方あるいはこれから読もうと思っている方以外には、何の興も湧かないでしょうので、なるべく簡潔に。
肝要所のネタバレは無いように、気をつけます。

利休にたずねよ
利休にたずねよ
山本 兼一
我が国茶道の大成者・千利休を描いた歴史小説。2008年に直木賞を受賞しています。

天下人・豊臣秀吉から一時は親しく遇されながら、末には死を賜った千利休。物語は利休が切腹で果てるその前夜から始まる。

天性の審美眼を持つ上、更に独自の美の世界を形成しそこに没頭する利休。彼の過剰とも思える“美”への執着心がどこからくるのか・・・。一般的に『侘び茶』と云われる利休の美の世界の中に、枯れた空気と対極にある命の躍動と、艶っぽさがあるのは何故なのか。
その謎に、利休切腹の日から一章毎に時間軸を遡り、若かりし日の利休へと向かいながら解き明かしていく、その構成が斬新で興味深かった。

利休に好意的な者、崇拝する者、反対に敵愾心を燃やす者など、主眼を章毎に次々変えていくのも、多くの視点で利休という人物に迫る手法として面白い。利休の“美の世界”を一辺倒に持て囃すばかりでない、多面的で奥深い物語になっている。
かつて利休に師事した山上宗二が、身の流転を経た上、「侘びの寂びのと優雅に唱えられるのは、家もあり、炉も釜もあっての話」との感慨を利休に零すシーンでは、「それは読者たる私も利休の“美”世界を読み進めながら密かに感じていた言葉だ」と、深く合点してしまった。

利休の生死を握る秀吉の、利休の人並みならぬ審美眼に対する悋気(或いは畏怖)。多くの愛人をもってきた利休の現妻である宗恩の、愛憎交じり合う肉声・・・など、利休を死に至らしめた運命の過程が、色々な意味で公平に描かれており、著者山本氏の主人公を時には突き放して観察出来る鳥瞰的な感覚に、好感を覚えた。
西洋美術こそが最高峰であるとする宣教師ヴァリニャーノが、「日本の美などは、世界的観点でみれば珍奇極まりない」と酷評するその言葉が、やや鈍った筆で綴られるのは、日本美を愛する筆者としての限界という事でご愛嬌。


残念な点を挙げると・・・。
利休が到達点として目指す“美の世界”が一体何なのか、彼の“美を求める事”に対する貪欲の起源は何なのか。
物語の最大要所であるこの点が、非常に人間的というか、青春時代にありがちなというか・・・凡庸なネタに終ったのが何とも残念。
人間の些細な営み一つ一つをも、森羅万象に寄り添わせ同化させる。そんなダイナミックな世界を期待していただけに、なんとも鼻白んだ。
いや、もしこの物語が完全なフィクションで、創作上の茶人を主人公としているのなら、一人の人間として感銘し共感出来ると思う。しかし今作で描かれているのは歴史に名を刻む茶道の大家。その利休の“美の世界”を、「その程度で完結させてもらっちゃ困るよ」と、苦笑してしまうのである。


歴史上の大人物も、「実は平凡な一人の人間だったんだ」という風になぞらえるのが、今の流行でもあるようだが、この点私は賛同出来ない。
『歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである』(by ヤコブ・ブルクハルト)
歴史に名を刻んだ大人物は、良くも悪くも、人を巻き込み動かし共鳴させる、強烈な存在感とオーラの持ち主であろうというのが、私の歴史観。



文章がとても美しく、その点惚れ惚れしながら読み進んだ。
利休が、茶事の道具を一つ一つ吟味し、所作一つに心を配ったのと同じように、そこに在る美の世界を表現する言葉を、一語一語吟味し、推敲されたのがよく分かる。
筆者の語彙が豊富で、耳慣れない熟語も多数出てくる為、『辞書を片手に』の読書となったが、これは私の勉強不足。(尤も、知らない熟語も前後の文脈から意味を察する事は出来るのだが、著者があまりにも言葉を吟味している熱意が伝わってくるので、こちらも襟を正して読んでしまうのだ)
物理的な描写に於いても、抽象的な描写に於いても、よりしっくりとくる言葉を選ぶ為に語彙を尽くしたという感じが、緊張感を生み出し、独特の雰囲気になっている。利休が、一つの茶席に一期一会の想いを乗せたのに似た、筆者の入魂の念を感じる。
しかし、それが文章に過剰の気負いを感じさせる一因にもなっているように思える(私の勉強不足を差し引いて考えても)。「そこ、もっと普通の言葉でいいんじゃないの?」と感じてしまう箇所が、少なくなかった。やや、筆者の語彙力のひけらかしに感じられる部分もあり、妙に威圧された。いってみれば読者が、格調の合わぬ茶席に招かれたような気分になるのだ。最高の美を具現しつつも、招客に威圧感を感じさせないのが、一流の茶人かと思うのだが・・・。
また、既存の熟語ばかりに拘らず、個性的な擬態語なども取り入れた方が、より“美の世界”を深く描けたように思う。


人間の心の底にある、美しい部分、醜い部分を描いた作品だが、読後感は良かった。章立ての構成なので、通勤電車の中などの細切れの時間に読むのにも向くかと思う。
利休の美の世界に共感する人も、反感を覚える人も、それぞれに楽しめる作品かとオモイマス。



| I Love ♪ | 13:59 | comments(0) | - | - | - |
Comment










04
--
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
--
>>
<<
--
Profile
New entries
Archives
Categories
Recent comment
Recommend
こちらもヨロシク
masumiaoiをフォローしましょう
Mobile
qrcode
Links
Others
無料ブログ作成サービス JUGEM